1年ものの杉板


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vow’s space+cafeは、10月2日で1周年を迎えることが出来ました。本当にありがとうございます。

思えば昨年の夏は、自分たちのお店を開く場所が阿倍野区昭和町にやっと見つかって、頭の中は何もわからず手探りながら、毎日、氷やお水を自転車に積んで大工さんが頑張ってくれている工事現場に通って過ごしていました。

主に予算の関係、そしてちょっとだけ思い出づくりに、塗装は私たちの仕事になりました。セルフリノベーションを積極的に応援してくれる地元在住の建築家 伴 現太さん、そして、”塗装なら任せろ!”の頼りになる師匠、木工作家とパティシエのご夫婦マンマミーアの川端健夫・ミアご夫妻と息子のいっちゃん、などなど・・・.多くの友人が力を貸してくれていました。カフェやデッキ部分の壁は大工さんが杉板を張ってくれた後でグレーのペンキを塗ることになり、濃いのか、薄いのかの見当もつかないまま、ムラムラに、でも一生懸命に、みんなで塗ったことを思い出します。そのときに少し余った材木の端切れは、特に用途が見当たらず、お店の外の室外機の上に並べて植木を置いたりして、その存在も忘れていました。

先日、陶の動物たちを作っている作家の前川幸市さんがお店に足を運んでくださって、味わいのある動物たちをたくさん届けてくれました。前川さんはずっとうちのスペースで展示をしてほしいと願っていた作家さんで、ついに来春に個展をしていただくことが決まり、一足早くやってきた待望の作品たちです。

夏から続いていたいろいろなイベントが終了し、1周年を迎えたこともあって、スペースの常設展示を少し変えようと、早速、奥のスペースに前川さんの動物たちの場所をしつらえることにしました。小さなネコや犬、そして前川さんの描いた絵本”しましまの町”の中から飛び出した個性いっぱいのネコたちです。

しかし、西川と二人、いろいろなテーブルを出してディスプレイしてみるのですが、どうにもしっくり行きません。テカッとしたこぎれいなテーブルの天板と前川さんの動物たちは、お互いが相容れないもの同士のように見えました。困り果てて、あ〜古材があったらなあ・・・と考えていたら、突然、そうだ!あの杉板があったじゃないか!と思い出したのです。室外機の上の杉板のことを。

もう夜で外は真っ暗、でもごそごそと室外機の上にのっていた板を運びました。砂や埃で薄汚れた板を、一枚一枚、西川が一生懸命拭いてくれました。そうしたら、その埃の下から、ものすごくいい雰囲気に変身したグレーの板が出てきたのです。早速テーブルの上に板を並べ、その上に前川さんの動物たちが並びました。私たちとしては言うことなし!1年ものの杉の板はすっかり大人になって、包容力すら感じるようないい顔になっていました。

1年ものの杉板の上に、1年ものの願いが実現してやって来た動物たち。時間が経って歳を取るのは嬉しいことばかりじゃないけれど、このときばかりは、この一年の時間の力や意味を感じ、感謝しました。時間が経つのも悪いものじゃありませんね。来春、前川さんの作品展もお楽しみに!